AI時代のサイバーセキュリティ対策とは?攻撃の高速化に備え、企業が本当に見直すべきこと

は、Claude Mythos Previewについて、非常に高度な人間を除けば人間を上回る水準でソフト生成AIやAIエージェントの進化は、サイバーセキュリティの世界にも大きな変化をもたらし始めています。

近年、Anthropic社のClaude Mythos Preview、GoogleのBig Sleep、その他のセキュリティ特化型AIやAIエージェントが登場し、脆弱性の発見、悪用可能性の検証、ログ分析、インシデント対応支援など、サイバーセキュリティ領域でAIを活用する動きが加速しています。

たとえばAnthropicウェア脆弱性を発見・悪用できる能力に達していると説明し、Project Glasswingを通じて重要ソフトウェアの防御目的で活用するとしています。Project Glasswingには、AWS、Apple、Broadcom、Cisco、CrowdStrike、Google、JPMorgan Chase、Linux Foundation、Microsoft、NVIDIA、Palo Alto Networksなどが参加しています。

またGoogleは、AIエージェント「Big Sleep」が実際のソフトウェア脆弱性を発見し、2025年にはSQLiteの重大な脆弱性CVE-2025-6965を発見したと公表しています。Googleは、この事例について、AIエージェントによって実際に悪用される前の脆弱性を発見し、攻撃を未然に防いだ初の事例と説明しています。

さらに、Cloudflareも自社インフラに対して複数のセキュリティ特化型LLMをテストしており、それらは自社システムの潜在的な脆弱性発見に役立つだけでなく、今後攻撃者が最新モデルで何をできるようになるのかを知る手段にもなると述べています。

このような動きを見ると、「AIによってゼロデイ攻撃が大量に発生するのではないか」「従来のセキュリティ対策では守れなくなるのではないか」と不安に感じる方もいるかもしれません。

しかし、企業のシステム担当者・セキュリティ担当者がまず理解すべきことは、AIによってセキュリティ対策の本質がまったく別物に変わるわけではない、ということです。

むしろ重要なのは、AIによって攻撃の時間軸が短くなるという点です。

脆弱性の発見が速くなる。
悪用可能性の検証が速くなる。
攻撃手順の組み立てが速くなる。
フィッシング文面や偽装の精度が上がる。
ログや窃取情報の分析も速くなる。
攻撃対象の選定も効率化される。

その結果、防御側に残された判断時間や対応時間は、これまでよりも短くなる可能性があります。

だからこそ、これからのセキュリティ対策で重要になるのは、AIという言葉に過剰に反応して新しい製品や流行語に飛びつくことではありません。

攻撃を受けないための基礎対策を徹底すること。
そして、攻撃を受けた、または攻撃を受けた可能性があると認知した瞬間に、迷わず、適切に、被害を広げず、復旧へ向かえる体制と環境を平時から整えておくことです

AI時代のセキュリティ対策とは、特別な魔法の導入ではありません。

資産管理、脆弱性管理、認証・権限管理、ネットワーク分離、ログ監視、バックアップ、インシデント対応、机上訓練、経営層の関与といった基礎対策を、形式ではなく、実際に動く状態まで高めることです。

AI時代のサイバーセキュリティで何が変わるのか

AI時代のサイバーセキュリティを考えるうえで重要なのは、「AIが攻撃者の代わりにすべてを自動で実行する」と単純化しないことです。

現時点でより現実的なのは、人間の攻撃者がAIを使い、攻撃の一部工程を高速化・効率化していくという見方です。

英国NCSCは、2027年までにAIがサイバー脅威を高める可能性が高いとしつつも、完全に自動化された高度なエンドツーエンド攻撃は2027年までには起こりにくいと評価しています。一方で、熟練した攻撃者がAIを使い、脆弱性の特定・悪用、マルウェアや攻撃インフラの変更、検知回避など、攻撃チェーンの一部を自動化していく可能性は高いとしています。

つまり、AI時代の現実的な脅威は、「AIが勝手にすべてを攻撃する世界」ではありません。

より現実的には、攻撃者がAIを使うことで、これまで時間や専門知識が必要だった作業の一部が短時間で実行され、攻撃の速度・規模・精度が上がる世界です。

これは、企業にとって非常に重要な意味を持ちます。

これまでは、脆弱性情報が公表されてから攻撃が本格化するまでに、一定の猶予があると考えられていたケースもありました。しかしNCSCは、脆弱性の公表から悪用までの期間はすでに数日単位に縮まっており、AIはその期間をさらに短くする可能性が高いと指摘しています。

この変化は、単に「ゼロデイが増える」という話だけではありません。

既知の脆弱性、いわゆるN-day脆弱性を放置している組織が、これまで以上に短時間で狙われやすくなるということです。

国の指針も「AIへの過剰反応」ではなく「基本対策の徹底」を求めている

日本政府も、AIの高度化を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化を求めています。

2026年5月18日、内閣官房国家サイバー統括室、内閣府、警察庁、金融庁、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、防衛省は、「AI性能の高度化を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化について」という重要インフラ事業者等向けの注意喚起を公表しました。この文書では、AIがサイバー攻撃に悪用されることで、攻撃のスピードや規模が劇的に増加する可能性があると指摘されています。

同文書では、Claude Mythos PreviewをはじめとするフロンティアAIモデルによって、脆弱性の発見・修正等のサイバーセキュリティ性能が急速に向上していることに備える必要があるとされています。一方で、高性能AIは防御側にも活用可能であり、ベンダーによる脆弱性の発見・修正、重要インフラ事業者等による検知・対応など、防御力の強化にもつながると整理されています。

ここで重要なのは、国の指針も「AIが危険だから、まったく新しい特殊な対策だけを急いで導入せよ」と言っているわけではない点です。

むしろ、経営層のリーダーシップの下で、基本的なサイバーセキュリティ対策を確実に実施し、さらに対策を強化することが求められています。具体的には、資産管理、リスクアセスメント、脆弱性管理、アカウント管理、認証、アクセス制御、バックアップ、監視・分析、事業継続計画、インシデント対応・復旧、サプライチェーンリスク対応などが重要項目として挙げられています。

これは、企業の現場にとって非常に現実的な指針です。

AI時代だからといって、従来のセキュリティ対策が無意味になるわけではありません。

むしろ、これまで重要だと言われてきた対策を、本当に実行できているかが問われる時代になったと考えるべきです。

Mythosだけではない。AIによる脆弱性発見・攻撃支援は広がっていく

Claude Mythosは、AI時代のサイバーセキュリティを考えるうえで象徴的な事例です。

しかし、今後の議論をClaude Mythosだけに限定してしまうと、本質を見誤る可能性があります。

重要なのは、特定のモデル名ではありません。

重要なのは、AIによって脆弱性の発見、悪用検証、攻撃手順の作成、防御側の分析支援が高速化していくという大きな流れです。

AnthropicのProject Glasswingはその一例です。GoogleのBig Sleepもその一例です。Cloudflareが複数のセキュリティ特化型LLMを自社環境で評価していることも、その一例です。さらにReutersは、米国CISAがAnthropicのMythosを使って政府コードリポジトリを監査していると報じており、AIによる脆弱性監査が政府機関の実務にも入り始めていることがうかがえます。

つまり、企業が考えるべきなのは、「Mythosにどう対応するか」ではありません。

AIによって攻撃と防御のスピードが上がる時代に、自社のセキュリティ運用は追いつけるのか
という問いです。

この問いに答えるためには、単に最新のAIモデルの名前を追いかけるだけでは不十分です。

自社の外部公開資産は把握できているか。
脆弱性情報が出たときに、自社への影響を判断できるか。
パッチ適用できない場合の緩和策を取れるか。
ログは残っているか。
異常に気づけるか。
攻撃を受けたときに、誰が何を判断するか決まっているか。
復旧できるバックアップはあるか。
経営層は判断に関与できるか。

このような基本的な問いに答えられる状態を作ることこそ、AI時代のセキュリティ対策の出発点です。

AIによって攻撃側はどう変わるのか

AI時代において、攻撃側にはいくつかの変化が起こると考えられます。

1.偵察の効率化

第一に、偵察の効率化です。

攻撃者は、公開情報、Webサイト、SNS、求人情報、技術ブログ、GitHub、漏えい情報、ドメイン情報、証明書情報、外部公開サービスなどを調査します。AIを使えば、これらの情報を短時間で整理し、攻撃対象として有望な組織やシステムを絞り込むことが容易になります。

2.脆弱性調査の高速化

第二に、脆弱性調査の高速化です。

AIはコード解析、設定ファイルの確認、公開された脆弱性情報の要約、PoC作成の補助、影響範囲の推定などに活用される可能性があります。特に、既知脆弱性の悪用までの時間が短くなることは、多くの企業にとって現実的な脅威です。

3.フィッシングやソーシャルエンジニアリングの高度化

第三に、フィッシングやソーシャルエンジニアリングの高度化です。

生成AIによって、日本語として自然なメール、取引先を装った文面、社内連絡に見えるメッセージ、経営層や担当者を狙った説得力のある文章を大量に作成しやすくなります。従来のように「日本語がおかしいから気づける」という前提は通用しづらくなります。

4.侵入後の行動の効率化

第四に、侵入後の行動の効率化です。

攻撃者が侵入後に得たログ、ファイル一覧、権限情報、ネットワーク情報、認証情報などをAIで整理すれば、次にどのサーバーを狙うべきか、どのアカウントを使うべきか、どの情報を窃取すべきかを判断しやすくなる可能性があります。

5.攻撃の大規模化

第五に、攻撃の大規模化です。

AIを使うことで、攻撃の準備や分析にかかる時間が短くなれば、攻撃者はより多くの組織を対象にできます。NCSCも、AI対応の侵入能力が国家・非国家の幅広い攻撃者に広がり、既存の攻撃手法を強化する可能性が高いと評価しています。

ただし、ここで過剰に恐れる必要はありません。

AIによって攻撃が速くなるとしても、攻撃者が狙うポイントは大きく変わりません。

外部公開された脆弱なシステム。
更新されていないVPNやファイアウォール。
弱い認証。
多要素認証のないアカウント。
過剰な管理者権限。
ネットワーク分離の不足。
ログが残っていない環境。
バックアップが破壊可能な構成。
初動対応が決まっていない組織。

AI時代においても、攻撃者は「入りやすく、広げやすく、止めにくい環境」を狙います。

防御側もAIを使える。しかし、AIだけでは守れない

AIは攻撃者だけのものではありません。

防御側もAIを活用できます。

たとえば、脆弱性情報の要約、自社システムへの影響調査、ログ分析の補助、アラートの優先順位付け、インシデント対応手順の確認、経営層向け報告書の下書き、教育資料の作成、ソースコードレビュー、設定確認などにAIを使うことができます。

日本政府の注意喚起でも、高性能AIを防御側の脅威検知、インシデント対応、脆弱性発見などに活用することが期待されています。

しかし、AIを使えば自動的に守れるわけではありません。

AIが脆弱性を指摘しても、どのシステムに影響があるのかを把握していなければ対応できません。
AIが不審なログを示しても、誰が判断し、誰に連絡し、どの端末を隔離するのかが決まっていなければ初動は遅れます。
AIが修正案を提示しても、検証環境や変更管理の仕組みがなければ本番環境には適用できません。
AIが報告書を作成しても、経営判断や業務停止判断を代替することはできません。

AIは、判断を支援する道具です。
しかし、責任ある判断を行うのは組織です。

そのため、AI時代に必要なのは「AIに任せること」ではありません。

AIを活用しながら、組織として判断し、行動できる体制を作ることです。

AIシステム自体も新しい攻撃対象になる

AI時代のセキュリティ対策では、もう一つ重要な視点があります。

それは、AIを使って攻撃されるだけでなく、企業が導入したAIシステム自体が攻撃対象になるという点です。

NCSCは、AIシステムの普及によって新たな攻撃対象領域が生まれると指摘しています。AIシステムには、データ、学習・評価方法、AIを利用するための技術が含まれ、プロンプトインジェクション、ソフトウェア脆弱性、間接プロンプトインジェクション、サプライチェーン攻撃などが、AIシステムを経由してより広いシステムへの侵入につながる可能性があるとしています。

実際に、企業向けAIチャットボット基盤の脆弱性が報じられた事例もあります。Axiosは、GoogleのDialogflow CXに関する脆弱性について、攻撃者がチャットボットの会話を監視・なりすまし・操作できる可能性があり、パスワード、保険情報、金融情報などの窃取につながる恐れがあったと報じています。この問題はGoogleによって修正され、悪用の証拠はないとされています。

このような事例が示しているのは、AIを業務に導入する際には、便利さだけでなく、セキュリティ設計も必要だということです。

AIチャットボット。
社内ナレッジ検索AI。
問い合わせ対応AI。
コード生成AI。
議事録作成AI。
メール作成AI。
顧客対応AI。
AIエージェント。

これらは業務効率化に役立つ一方で、社内情報、顧客情報、認証情報、業務フロー、システム連携情報に触れる可能性があります。

したがって、AIシステムを導入する際には、次の点を確認する必要があります。

どの情報をAIに入力してよいのか。
機密情報や個人情報を扱うのか。
AIの出力を誰が確認するのか。
外部サービスにデータが送信されるのか。
学習利用されるのか。
ログはどこに保存されるのか。
権限は最小化されているか。
社内システムとの連携範囲は適切か。
AIエージェントが実行できる操作は制限されているか。
誤動作や悪用時に停止できるか。

AI時代のセキュリティ対策とは、AIを使った攻撃に備えるだけではありません。

自社が使うAIを、安全に導入・運用することも含まれます。

結局、企業にとって重要なことは何か

AI時代のセキュリティ対策で重要なのは、特定のAIモデル名に振り回されないことです。

Claude Mythos、Google Big Sleep、その他のセキュリティ特化型AIやAIエージェントは、今後も進化していくでしょう。

しかし、企業が向き合うべき本質は変わりません。

攻撃の時間軸が短くなる。
だからこそ、攻撃を受けたと認知した瞬間に、適切に判断し、被害を拡げず、復旧へ進める体制と環境を平時から整える必要がある

この考え方が最も重要です。

AI時代だからといって、すべての企業が直ちに高度なAIセキュリティ製品を導入しなければならないわけではありません。

むしろ、まず確認すべきなのは次のような基礎対策です。

1.資産管理を徹底する

最初に必要なのは、資産管理です。

どのサーバーがあるのか。
どの端末があるのか。
どのクラウドサービスを使っているのか。
どのシステムがインターネットに公開されているのか。
VPNやリモートアクセス環境はどこにあるのか。
どのシステムが重要業務に関係しているのか。
どのベンダーが管理しているのか。

これが分からなければ、脆弱性情報が出ても自社への影響を判断できません。

AIによって脆弱性発見や攻撃準備が速くなるほど、資産管理ができていない組織は初動で遅れます。

「この脆弱性は当社に関係あるのか」
「どのシステムが対象なのか」
「誰が管理しているのか」
「止めてもよいのか」
「ベンダーに確認すべきなのか」

この判断に時間がかかるほど、攻撃者に時間を与えることになります。

2.脆弱性管理を一覧管理で終わらせない

脆弱性管理は、単に脆弱性情報を一覧表にすることではありません。

重要なのは、リスクに応じた優先順位付けと対応判断です。

外部公開されているか。
認証なしで悪用可能か。
攻撃コードが出回っているか。
重要システムに関係するか。
個人情報や機密情報に到達し得るか。
代替策や緩和策があるか。
パッチ適用による業務影響はどの程度か。
一時的に通信制限やアクセス制御で防げるか。

すべての脆弱性を即日修正できる企業は多くありません。

だからこそ、何を最優先で対応するのか、パッチが難しい場合にどう緩和するのか、誰が判断するのかを決めておく必要があります。

AI時代の脆弱性管理は、発見力だけではなく、判断力と運用力が問われます。

3.認証と権限管理を見直す

攻撃者が侵入した後、被害が広がるかどうかを大きく左右するのが認証と権限管理です。

多要素認証がない。
管理者権限が広く付与されている。
退職者や異動者のアカウントが残っている。
共有アカウントが使われている。
VPNアカウントの棚卸しがされていない。
ローカル管理者権限が放置されている。

こうした状態では、侵入後の横展開が容易になります。

AIによって攻撃の準備や侵入後の分析が速くなるなら、防御側は侵入後に広がらない設計をより重視すべきです。

多要素認証、管理者権限の最小化、特権ID管理、不要アカウントの削除、共有アカウントの廃止、外部アクセスの制御は、AI時代においても極めて重要です。


4.ネットワーク分離と横展開対策を行う

侵入を完全に防ぐことは困難です。

そのため、侵入された場合に、どこまで被害が広がるかを制御することが重要になります。

すべての端末からすべてのサーバーへ通信できる状態は危険です。

事務系ネットワーク、サーバーセグメント、管理系ネットワーク、バックアップ環境、重要システムは、必要に応じて分離する必要があります。

特に、バックアップ環境や管理用端末が通常端末から容易に到達できる状態は避けるべきです。

AI時代のセキュリティでは、侵入されない対策と同時に、侵入されても拡げない対策が重要になります。

5.ログを残し、見られる状態にする

インシデント対応で大きな差が出るのがログです。

ログがなければ、何が起きたのか分かりません。

どの端末から侵入されたのか。
どのアカウントが使われたのか。
どのサーバーへアクセスされたのか。
情報が持ち出されたのか。
いつから侵害されていたのか。

これらが分からなければ、適切な封じ込めも、復旧判断も、経営層への説明もできません。

AI時代には、ログ分析にもAIを活用できる可能性があります。

しかし、そもそもログが残っていなければAIも分析できません。

ファイアウォール、VPN、認証基盤、サーバー、端末、EDR、クラウドサービス、メール、重要システムのログを残すこと。

そして、保存しているだけでなく、必要なときに確認できること、時刻同期ができていること、担当者が見方を理解していることが重要です。

6.バックアップと復旧手順を確認する

ランサムウェア対策において、バックアップは最後の砦です。

しかし、バックアップは「取っている」だけでは不十分です。

本当に復旧できるか。
バックアップも暗号化されないか。
バックアップ環境に通常端末からアクセスできないか。
復旧に何時間・何日かかるか。
どのシステムから優先して復旧するか。
復旧判断を誰が行うか。
代替業務手順はあるか。

ここまで確認して初めて、バックアップは実効性を持ちます。

攻撃の時間軸が短くなるほど、復旧力の重要性は増します。

7.インシデント対応体制を平時から作る

AI時代に最も重要になるのは、インシデント対応体制です。

攻撃を受けた後に、初めて対応方法を考える組織は危険です。

攻撃を受けたと認知した時点で、すでに次のことが決まっている必要があります。

誰が一次判断するのか。
誰が経営層に報告するのか。
誰がベンダーに連絡するのか。
誰が端末を隔離するのか。
誰がネットワーク遮断を判断するのか。
誰が外部専門家に連絡するのか。
誰が証拠保全を行うのか。
誰が復旧の優先順位を決めるのか。
誰が社外説明を判断するのか。

これらは、インシデントが起きてから決めるものではありません。

平時に決め、訓練しておくものです。

特に、システム担当者が少人数の企業では、担当者個人の努力だけに依存してはいけません。

経営層、総務、法務、広報、現場部門、外部ベンダー、外部専門家を含めた体制が必要です。

AI時代に求められるのは、完璧な防御ではありません。

攻撃を受けたときに、迷わず、早く、適切に動ける状態です。

AI時代に避けるべき誤解

AI時代のセキュリティ対策では、いくつか避けるべき誤解があります。

誤解1:AI時代には従来の対策が無意味になる

これは誤りです。

AIによって攻撃が高速化・効率化しても、資産管理、脆弱性管理、認証強化、権限管理、ネットワーク分離、ログ監視、バックアップ、インシデント対応といった基本対策の重要性は変わりません。

むしろ、重要性は増します。

攻撃の時間軸が短くなるほど、基礎対策の不足が短時間で被害につながるからです。

誤解2:AIセキュリティ製品を導入すれば守れる

これも誤りです。

AIを活用したセキュリティ製品は有効な場合があります。

しかし、製品を導入しても、資産管理ができていない、ログが見られていない、初動対応手順がない、権限管理が甘い、バックアップから復旧できないという状態では、被害を防ぐことは困難です。

AI製品は対策の一部にはなります。
しかし、組織のセキュリティ運用そのものを代替するものではありません。

誤解3:ゼロデイだけを警戒すればよい

ロデイは確かに重要な脅威です。

しかし、多くの企業で現実的に問題になるのは、既知脆弱性の放置、設定不備、弱い認証、過剰な権限、ログ不足、バックアップ不備です。

AIによってゼロデイ発見が速くなる可能性はあります。

しかし、それ以上に、既知の問題を放置している組織が短時間で狙われるリスクも高まります。


誤解4:AIを使えば人の判断は不要になる

AIは調査や分析を支援できます。

しかし、業務停止の判断、システム遮断の判断、外部公表の判断、復旧優先順位の判断、経営判断はAIだけではできません。

AIが出した結果をどう解釈し、どのリスクを受け入れ、どの業務を守るのかを決めるのは組織です。

AI時代だからこそ、人と組織の判断体制が重要になります。

企業が今すぐ確認すべきチェックポイント

AI時代のセキュリティ対策として、企業のシステム担当者・セキュリティ担当者は、まず次の点を確認すべきです。

外部公開しているシステムを把握しているか。
VPN、リモートアクセス、ファイアウォール、グループウェア、ファイル転送システムの更新状況を確認しているか。
新しい脆弱性情報が出たとき、自社への影響を判断する担当者と手順が決まっているか。
多要素認証を導入しているか。
管理者権限を必要最小限にしているか。
退職者・異動者・不要アカウントの棚卸しをしているか。
重要システムと通常端末のネットワークを分離しているか。
ログを必要な期間保存しているか。
ログの時刻同期ができているか。
感染端末を隔離する手順があるか。
バックアップから実際に復旧できるか。
インシデント発生時の連絡体制が決まっているか。
経営層に報告する基準が決まっているか。
机上訓練を行ったことがあるか。
外部専門家やベンダーへの連絡先を整理しているか。
AIサービスに入力してよい情報と入力してはいけない情報を決めているか。
社内で利用しているAIサービスやAIエージェントを把握しているか。
AIが社内システムへアクセスできる範囲を制限しているか。

これらは、高度なAI対策以前の問題です。

しかし、AI時代には、これらの不足がより短時間で重大な被害につながります。

まとめ:AI時代に重要なのは「攻撃を受けた後に動ける組織」になること

Iの進化によって、サイバーセキュリティの世界は確実に変化しています。

脆弱性の発見は速くなる。
悪用可能性の検証も速くなる。
攻撃手順の組み立ても速くなる。
フィッシングや偽装も巧妙になる。
防御側の調査・分析もAIで支援されるようになる。

しかし、それによってセキュリティ対策の本質がまったく変わるわけではありません。

むしろ、これまで重要だと言われてきた基礎的な対策の重要性が、さらに増していると考えるべきです。

AI時代のセキュリティで最も重要なのは、未知の脅威に過剰に怯えることではありません。

攻撃と防御の時間軸が短くなることに備えることです。

攻撃を受けないための対策は当然必要です。
しかし、それだけでは不十分です。

これからは、攻撃を受けた、または攻撃を受けた可能性があると認知した瞬間に、適切に判断し、被害を拡げず、早期に復旧へ向かえる体制が求められます。

AI時代のセキュリティ対策とは、特別な魔法の導入ではありません。

資産管理。
脆弱性管理。
認証・権限管理。
ネットワーク分離。
ログ監視。
バックアップ。
インシデント対応。
机上訓練。
経営層の関与。
AI利用ルールの整備。
AIシステムそのものの保護。

これらを、形式ではなく、実際に動く状態まで高めることです。

最終的に差が出るのは、どのAIを使っているかだけではありません。

日頃から備えている組織か。
攻撃を受けたときに迷わず動ける組織か。
基礎対策を継続的に回せる組織か。
AIを安全に使いこなせる組織か。

AI時代のサイバーセキュリティで本当に問われるのは、そこです。

AI時代のセキュリティ対策に不安がある企業様へ

AI時代のサイバーセキュリティ対策では、最新の脅威情報を追いかけることも重要ですが、それ以上に重要なのは、自社の現状を正しく把握し、必要な対策を実際に運用できる状態へ整えていくことです。

「資産管理が十分にできているのか」
「脆弱性情報が出たときに自社への影響を判断できるのか」
「ログは残っているが、実際に確認できているのか」
「インシデント発生時に誰が何を判断するのか」
「バックアップから本当に復旧できるのか」
「AIサービスを安全に利用するためのルールは整備できているのか」

こうした点は、分かっていても日々の業務の中で後回しになりがちです。

株式会社クロイツでは、企業のシステム担当者様・セキュリティ担当者様に向けて、現状のセキュリティ対策の確認、脆弱性管理、ログ確認、インシデント対応体制の整備、サイバーBCP、机上訓練、AI利用時のセキュリティルール整備などを支援しています。

弊社の強みは、単にチェックリストに沿って確認するだけではなく、攻撃者の目線も踏まえながら、「どこから侵入されやすいのか」「侵入された場合にどこまで被害が広がるのか」「実際にインシデントが起きたときに現場が動けるのか」という観点で、実務に即した対策を一緒に整理できる点です。

AI時代のセキュリティ対策において重要なのは、特別な対策を一度導入して終わりにすることではありません。

自社の現状を把握し、優先順位を付け、必要な対策を継続的に運用し、攻撃を受けた際にも迷わず対応できる状態を作ることです。

AI時代のサイバーセキュリティ対策に不安がある企業様、現在の対策状況を一度確認したい企業様、インシデント対応体制やセキュリティ運用を見直したい企業様は、ぜひ株式会社クロイツまでご相談ください。